仕返し


「はぁ……、んっ……ぅあ」

 朝靄が立ち込める空に、小さなな息の根が聞こえた。
 それは少女のように、強く、儚さを醸し出しているその体は、日が当たるほどに美しい。
 少女に身に着けているものは、わずかな膨らみを覆う下着と、守るべき場所である下側のショーツだけである。
 そして少女は、今まさに、男によって快楽を与えられていた。

 ちゅ、ちゅ……っ

 首筋に這う紅い舌が少女の快感を更に高める。舐めるように反り上げ、そして反対運動を繰り返す。
 時にはゆっくりと首筋からその下へと、舌を動かす。男は同時に指も体に這わせていただが、何分慣れていないため、多少ぎこちないと思わせた。
 だが、今の少女にはそれで十分だった。十分すぎるほどの快感が時に激しさを増し、襲う。
 
 男は十分に首筋を味わった後、そのまま舌を這わせながら更に下降した。
 鎖骨を超えて、さらに下。小さな膨らみを覆うその遮蔽物を舌によって外そうとする。
 多少の歯は使い、いつのまにか左手をもう一つの膨らみに添えて、ゆっくりと外す。

「あっ……ん……ふぅ……ふぅ」

 飛び出したそれは、やはり大きいとは言えなかったが、思わず見とれてしまうほどの形の良い胸と成すものだった。
 他の部分に比べると更に色付きが良く、今まで見たことのない衝撃と相俟って、一瞬我を忘れてしまっていた。
 だが、耳元から聞こえる荒い息で瞬時に自分のやるべきことを行うことを決めた。
 
 チュパ、チュパ

「んぅあっ!?」

 強烈な刺激だったのだろうか、少女が大きな声を出して体を仰け反った。
 いきなり乳房を責めるのはまずかったかな、と多少の後悔を残し、続ける。
 左手は周りを重点的に、そして舌を使っては乳房だけを責めるように。

「あぁっ、んぅっ!」

 相反した、この責めは一見無理があるように見えるかもしれないが、少女にはこれは効果覿面である。
 調子付いた男は、そのまま責め続け、しばしの後、今度は逆の責め方で少女をもっと喘がさせた。
 少女は男が止めるまで、ずっと快感に浸り、そして止まらなかった。



「はぁ……、はぁ……」
 少女、遠坂凛は男……衛宮士郎を前にして、ひどく疲れていた。
 理由は、まぁ士郎に責められたのが原因なわけで。

「はぁ……、はぁ……って、まだするの!?」
 手を伸ばしかけた士郎に凛は驚いて大声を上げる。
 瞬間、驚いて手を引っ込めた士郎だが、それもあんまりだと思ったので、引っ込める前の位置まで持ってきてから
「え……駄目か?」
 とだけ言った。顔は真っ赤になりながら。

 凛は思う。
 こんな状態で、恥ずかしがるなんて、そんなの駄目なんて言える訳ないじゃない。
 私がまだ正常だったらいくらでもからかってやれる状況なのに、私としたことが不覚だわ。
 いつのまにか主導権握られてるし。どうなっちゃったの、私。
 でも、もう駄目。
 だって、体がもう言うこと効かないんだもの。
 体が欲している。大好きな魔術よりも、何よりも体が士郎を欲している。
 こんな状態初めて……。初めてだから、分からない。
 もっと、もっと士郎に触ってほしい。
 さっきはあんなこと言っちゃったけど、それはあまりの快感に驚いただけ。
 この先には、もっと大きな快感がある。分かっていたから少しだけ怖かった。
 でも、士郎のあんな顔を見てたら断れる訳なんて無い。だから、精一杯素直にならなきゃ。

「士郎……」
「えっ?」
 凜はだれていた腕を士郎の首へと回し、顔へと引き寄せ、キスをした。
 それはほんの軽いくちづけだけど、凜が決心するには十分すぎるものだった。
「いいよ……このまま……私を、抱いて?」
 士郎は唖然としながら、そして時間と共に大きく頷いた。

 ちゅぷっ……
「あぁぁぁっ!」
 初めてだからか、加減が分からないということもあった。
 とりあえず触れて、撫でてみたらこんな凄い反応をするとは思わなかったのだ。
「だ、大丈夫か遠坂」
 だから心配もする。痛かったのか? それとも気持ちよかったのか?
 年頃の男だと思うのに、女の体について何もわかっていないのは自覚しているから、こういう事を聞くのはまずいと思うが、聞かざるを得なかった。
 だが、体が震え、止まったとき、思ったより凛の様子は安定していた。
 その事に士郎はほっとした。
 だが、凛はそう言うわけにもいかなかったのである。

 な、な……なに? 今の?
 あ、あれが……友達の言ってた……究極の快感?
 さわっただけで……、すご……本気で飛んじゃうかと思った。
 あれがもっと凄いことになるなんて……想像もできない。
 むしろ、想像したら怖い……かも。

「じゃ、じゃあ……もう一回触るぞ……」
「ちょっと待って!」
 勢いが過ぎて士郎を両手で押しとどめる凛だが、その後の事を何も考えてない今では、どうしようか見当もつけようがなかった。
 しまった、と思いつつも思考し、なんとか士郎よりも早く発言することを考える。
 考えろ、考えろ。
 苦肉の策でもいい。とにかくこの場にいる衛宮士郎よりも早く発言することが今のこの状況において最も重要かつ、必須条件である。
 しかし、先ほどの快楽の分も混じり、まともな思考回路が形成できない。
 それでも考えられるのが、この遠坂凛の一途な強さだろうか。返して子悪魔的考えとも呼べなくはない。
 普通の人間が10秒で考えることを、この遠坂凛は4秒でそれを成しあげる。
 そんな崖っぷちの不可能的な方程式をくみ上げ、凛は今思う最高の策を士郎に伝えることに成功した。

「あのさ……、ほら、よく男の人が言うじゃない? この肉棒がほしければ自分のあそこの名前を言って……みろ……と……か」
 
 考えた時点では最高だと思ってた自分の考えも、発言すればするほどドツボに落ちているのに気づく。
 最悪すぎる。よりにもよって自分からMっ気サイン出しまくりの発言。
 これじゃあ自分はどこかの変態じゃないか。
 しかし、言ってしまった手前、発言を無しにするという事は不可能だし、士郎もバッチリ聞いてしまっている。
 もしかして、これを聞いた士郎は興奮して襲ってくるのかもしれない。さっきよりもっと激しく責めてくるのかもしれない。
 まだ心の準備が出来てないのに、私は何自分で地雷踏んでいるのよ!
 と、自分自身にキレかけていた。

「遠坂……っ」
 語調が若干荒くなり、士郎が近づいてくる。
 やっぱり欲情したのだろうか。私の言うとおり、いじめながら責めたりするのだろうか。
 少しの恐怖とちょっとした期待感はあるが、だが、怖いという感情の方が断然高い。
 あんなすさまじい快感がまだまだ襲ってくるなんて、想像できないから。
 だから、もっとゆっくりやってほしかっただけなのに……っ。

「そ、そんな恥ずかしいこと、なんで俺が言わせるんだよ!」
 顔を真っ赤にしながらそう言った。
「……は?」
 凛は顔をぽかんとしながら、間抜けな返事をした。
「だって、そんなこと言ったら遠坂が怒るだろうし、遠坂が、そんな事を言うとは思えないし」
 凛は相変わらずの顔で聞いている。
 そうか……。忘れていたけど、こいつってこんな真面目な奴なんだなぁ、って今更ながらに思い出した。
 凛は少し口元を歪ませ、声を出さずに笑った。笑ったら士郎が怒ると思ったからだ。
 よく考えたら私が士郎相手に「受け」っていうのも元々おかしい話だったのよ。
 だから、笑いが段々抑え切れなくなって……。
「ふふふ……」
「な、何がおかしいんだよ」
 そんなに緊張することはなかったのだ。
 ただ、自分に合わせれば、それだけでいつもの自分になれる。
 だから、もう士郎になんか主導権は握らせないんだから。

「士郎」
 先ほどよりと明らかに違った凛の毅然とした声が、士郎をひるませた。
「な、なんだよ……」
「今から私がリードするから、あんたはそこに四つんばいになりなさい」
「なんで俺が……うわっ」
「いいから早くなりなさいってのよ」
 押し倒すような形で、無理やり士郎を四つんばいにさせると、右手を使って、士郎の膨らむ下半身を手に取った。
 トク、トクとそれは脈を打ち、そして温かい。
 勢いで握ってしまったが、初めて触るそれは、いくら凛であろうと赤面してしまうほどの威力があった。
「さ、さぁ……私が握ってあげるから、どうやって欲しいかいいなさい」
「何言ってんだ、遠坂。急にどうしたんだ」
 問いにそぐわない答えばかりで苛立ちが増す。いっそこのまま握りつぶしてしまおうかと考えたが、それはさすがにまずいだろうから自粛する。
 というか、これを握っていると不思議とそんな気はしなくなる。と言ったらなんだか変態みたいにも聞こえそうだが。
「早く言うのよ。私が握っているこのモノの名称を答えなさい。じゃないと、いつまでも苦しいままよ」
「う……うぅ……」
 苦しいのか、はたまた気持ちいいのか分からない状態で喘いでいる。
 恥ずかしいのか、顔を真っ赤にしながら口元をギリギリさせている。
 その顔はちょっと可愛いと思ったりもしたけど、今は自粛、自粛。
 ペースを取り戻して、次は士郎をトコトンまで責めてやらないと。
 ふふっ、今先っぽから何か出てきたよ。……面白いかも。

 さっきやられた分、たっぷり仕返ししてやるんだからね。




 あとがき。

 士郎と凛の初体験。
 なんかもう無理やりってな感じですが。
 18禁は初めてですが、描写がよくわからない。そりゃ体験なんぞ無いんでエロゲで補足するしか・・・(´Д`;)
 しかし、また脱線しました。
 ていうか今回は、脱線というより、完璧な間違いでしたが。
 いや、こんなネタを考えたので、いつもオリジだけだと芸がないなぁ・・・と思いまして。

「ほら、どうして欲しいか言ってごらん?」
「わ、わたしのあそこに・・・」
「あそこじゃわからないだろう? ちゃんと言うんだ」
「えと・・・わかりません」
「は?」
「だから・・・あそこの名前がわからないんです」
「そ、そんな馬鹿な」
「名前があるんだったら教えて欲しいです。なんていうんですか?」
「え、あ・・・・その・・・」
「ねぇ、なんて言うんですか?」
「う・・・、あ・・・お、おまn・・・」
「声が小さい!」
「ひ、ひぃぃっ!」

 
 と、まぁこんな感じでSとMの関係をひっくり返すようなこんなネタを考えたのですが、なんだかありそうな気がしてなりません。
 でもやっぱり凛はともかく、士郎じゃ駄目すぎたか。アーチャーの方がハマってた気がする。



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